ブータン : 国民の幸せをめざす王国

ブータン

国民の幸せをめざす王国

編著
地域研究
社会
熊谷誠慈 編
熊谷誠慈(人と社会の未来研究院 / 編集), 西平直(教育学研究科 / 分担執筆), 安藤和雄(東南アジア地域研究研究所 / 分担執筆)
Seiji Kumagai (人と社会の未来研究院, 編集), Tadashi Nishihira (教育学研究科, 分担執筆), Kazuo Ando (東南アジア地域研究研究所, 分担執筆)
出版年月
図書体裁
四六
出版社
創元社
ISBN
9784422360027
定価(税抜)
1,800
頁数
248
本文言語
日本語

内容紹介

 ヒマラヤの仏教王国ブータンは長いあいだ鎖国状態で秘境の国だったが、近年観光にも力を入れるようになった。とりわけ日本では2011年に国王夫妻が来日しブータンブームが起こった。  ブータンは物質的繁栄より国民の幸福を追求する国として知られる。同国の国民総幸福(GNH)政策は国連も注目、日本では荒川区がGAH(グロス・アラカワ・ハッピネス)を掲げ、「区政は区民の幸せのためにある」という行政方針に取り組んでおり、全国90の自治体が参加して「幸せリーグ」が設立されるなど地方行政にも大きな影響を与えている。  しかし、ブータンの国民は本当に幸福度が高いのか、仏教王国だが紛争はないのか、近代化との兼ね合いは? などこれまでほとんど伝えられなかったブータンの実像を様々なエピソードを交えながら紹介。経済と幸福との関係、指導者のあり方など、日本の進路を考える上でも示唆に富む本。 *ブータンを知るためのエピソード満載! エピソード1  東ブータンの知事が、ある農民に収穫量が格段に増える稲を試験的に栽培するよう依頼した。農民がそれを栽培すると、本当に二倍のコメが収穫できた。知事は、来年もこの稲を植えるよう依頼した。しかしその農民は「私は来年分のコメまで収穫したから、来年は余裕を楽しみ、精神的な生活を送りたい」と断った。 エピソード2  第二次ドゥアール戦争のとき、インドからの最後通牒を受けて、ブータンは軍事作戦を取らざるをえなくなった。そこで軍人の最高司令官は首都に残ったまま、国王自らが義勇兵の王子と連れ立って戦場に赴いた。  軍事行動に移ったとき、国王の命で高位の僧が次のような訓示をした。「あなた方は慈悲の心を持たねばならず、敵といえども、他の人間と同じように扱わねばならない。仏教徒として殺生が認められるとは絶対に思ってはならない」。 エピソード3  ブータンではこの10年で尼僧院が急増している。なぜ尼僧の道を選んだのかと尋ねると、「魂の来世」のために功徳を積むのだという。尼僧が急増している原因のひとつは「女性の権利」。社会が近代化する中で「女性の権利」が共有され始め、自分自身の魂の向上のためにこの人生を使うという発想をもつようになったのではないかという。

図書に貢献している教員