草の根グローバリゼーション : 世界遺産棚田村の文化実践と生活戦略 (地域研究叢書 25)

草の根グローバリゼーション

世界遺産棚田村の文化実践と生活戦略

地域研究叢書 25

日本学士院賞
単著
地域研究
社会
清水展(東南アジア地域研究研究所 / 著者)
Hiromu Shimizu (東南アジア地域研究研究所, 著者)
出版年月
出版社
京都大学学術出版会
ISBN
9784876982493
定価(税抜)
4,800
頁数
450
本文言語
日本語

内容紹介

本書が対象とするのは,フィリピン ルソン島の山また山の中,世界遺産として登録された広大な棚田が広がる村に暮らす,イフガオ族の人々です。
人類学が対象としてきた伝統社会は,地球上どこでも,グローバリゼーションという名の急激な近代化に曝されています。一般に,そうした変化に受動的な伝統社会が,抗う術も無く変容し活力を失ってくと考えられがちですが,どっこい,イフガオの人々はそうではありません。僅か人口1000人余りの村から,いま数百人が世界に旅立って,活躍しているのです。いわゆる「エリート××」とうのではありませんが,一市井として,しかし国境を飛び越えて異国と結びつき,地方を元気にしているのです。
座してグローバリゼーションを迎え撃つのではなく,むしろ出撃する。東京やマニラという首都や首都の政治リーダーを通さず,いわば辺境同士がダイレクトに結びつきうるのが,グローバリゼーションの可能性である。清水教授は,そう主張します。人びとが「近代化を飼い慣らし」自らの大きなチャンスを作っていく経緯に注目できるのは,単なる観察者でなく,文字通り,その地域に積極的に参与する,その姿勢と手法故でしょう。
人類学はもちろん,広く人文・社会科学の方法としての参与観察をラディカルに追求した本書は,開発や災害,紛争や難民,貧困,マイノリティ,生命倫理など,学問が社会に積極的にコミットすることが求められる現場で調査を行う人々の指針ともなります。現代社会における学問の在り方について再考を迫るものとして,最高の評価をされた本書,ぜひこの機会にお読みください。

目次

第1章 北ルソンの山奥でグローバル化を見る・考える

第1部 地域と世界を結びなおす企て
 第2章 過去を未来へ反転させる意味付与の実践
 第3章 「地球一周の旅」のあとで
 第4章 表象のポリティクス——文化を資源化する企て
第2部 グローバリゼーションと対峙した五〇〇年
 第5章 イフガオの生活世界
 第6章 辺境でグローバル・パワーと対峙する
第3部 グローバリゼーションを飼い慣らす
 第7章 森の恵みに生きる人々
 第8章 山奥からの海外出稼ぎと伝統の復活
第4部 草の根のグローバリゼーション
 第9章 「山奥どうし」の国際協力
 第10章 草の根の実践と希望

図書に貢献している教員

本書に関するニュース