ニーチェをドイツ語で読む

レビュー本

ニーチェをドイツ語で読む

編著

哲学・思想

細見和之 編
細見和之(人間・環境学研究科 / 編集)
白水社 / 2017.01

綴葉 2017年5月号 No.357, p.10

 フリードリヒ・ニーチェ。その偉大な思想家の名は殆ど誰しもが耳にしたことはあるであろう。『超訳ニーチェの言葉』をはじめとする関連書籍がコンビニにも並ぶ今日、ニーチェは最も名の知られた思想家の一人と言ってよい。だが同時にその思想の内実についてはその難解さゆえに最も知られていない思想家の一人と言ってもよいだろう。人生訓のような矮小化した形には到底還元できない圧倒的な力をニーチェの思想は湛えている。

 その漲る力をニーチェが獲得するに至った凄絶な知的格闘の過程を追いつつ、ニーチェの思想へと導いてくれるのが本書である。本書は六つのキーワードを切り口として、ニーチェのテキストからの抜粋部分における著者による対訳と、それに加えられた著者の解説から構成されている。他の入門書に見られない本書の特徴は何と言っても対訳部分の量の豊富さであろう。勿論、ドイツ語が読めない読者も対訳部分を読んでニーチェの思想に触れることはできるが、初級ドイツ語を超える知識に関しては著者の丁寧な注釈があるため、是非とも読者は対訳の部分を参考にしつつドイツ語でニーチェの思想を直に感じてほしい。本書はニーチェの思想のみならずドイツ語の世界への誘いの書でもある。

 辞書を片手に筆者とともにニーチェの思考をドイツ語で追ってみよ。その時、改めてその難解さとそこに潜む魔力を前にし、ニーチェがいかに狂気の淵で自身の思想を紡いでいったのかを感じるだろう。

レビューアー
ニコ

綴葉 2017年5月号 No.357