学びのエクササイズ 認知言語学

レビュー本

学びのエクササイズ 認知言語学

単著

言語

谷口一美(人間・環境学研究科 / 著者)
ひつじ書房 / 2006.03

綴葉 2017年6月号 No.358, p.6

 言語学では、1950年代以降、人類に普遍的な統語演算能力を重視するチョムスキー的な普遍文法の研究が中心であったが、1980年代になって、話者のものの捉え方を重視する認知言語学が生まれた。当時の状況で認知言語学を提唱することは「巨人ファンの集会で『阪神ファンです』と名乗りを上げる」ようなものだったらしい。認知言語学者である著者の谷口一美は人間・環境学研究科教授で、全学共通の開講科目もある。著者の学生時代はまだ入門書等はほとんど無かったというが、近年は日本語で書かれた入門書・概論書も数多く出版されている。そのような認知言語学の入門書のうちでも本書は最も平易なものの一つだ。

 中・高生にもわかるような丁寧な語り口でありながら、カテゴリー、抽象化、スキーマ、メタファーなどどいった認知言語学における重要な概念を網羅的に扱い、解説している。そしてそれらを通して、認知言語学がどのような言語観をとっているのかを明らかにしようとしている。本書を読めば、普段自分が何気なく発している言葉にも色々な認知的作用が働いていることが分かるだろう。たとえば、「やかんが沸騰している」、「机の脚」といった表現には、特別に修辞的なメタファーが使われているという印象は受けないのではないだろうか?それほど自然に私たちは認知的作用を駆使しているのである。

 本書で扱う概念は言語学に限ったことではなく、我々のものの捉え方に関することなので、様々な分野の人に手に取ってみてほしい一冊である。

レビューアー
カイ

綴葉 2017年6月号 No.358