日本の表装と修理

日本の表装と修理

編著
歴史
デザイン・発想
その他
岩﨑奈緒子 [ほか] 編集
岩崎奈緒子(総合博物館 / 編集, 分担執筆)
Naoko Iwasaki (総合博物館, 編集, 分担執筆)
出版年月
図書体裁
A5判
出版社
勉誠出版
ISBN
9784585200734
定価(税抜)
7,700
頁数
432
本文言語
日本語

内容紹介

装い、繕い、伝える―
絵画や書、古文書など、紙や絹を用いた文化財は、表装によって、より美しく、より長くその存在を守られ続ける。
そして、これらの歴史的遺産を修理・保存し、伝えていくことは、そこに込められた人々の思い・願いをも共有していく営みである。
表装や修理は、どのような価値観や思想のもとに行われてきたものなのか。文化財の修理・保存の第一線にあり、その困難な作業の中で、技術者たちはどのような試行錯誤を重ねてきたのか。
残し伝えられてきた「モノ」との真摯な対話の中から、表装と修理にまつわる文化史を描き出し、今日の我々にとっての文化財保護の意義と意味を照射する。

目次

口 絵

はじめに

第一部 現代の装潢・文化財修理
 装潢師の声を聞く―技術者から見た装潢文化財修理の進化 岩﨑奈緒子
  はじめに
  一 絵画と書跡の間
  二 汚さない修理を―絵画修理の展開
  三 課題を乗り越えて―書跡修理の展開
  結びに代えて

 表具師から装潢師へ 岡興造
  はじめに―紙を裁つ、紙を貼る
  一 近世以前の装潢師の歴史
  二 近代京都での装潢師
  三 装潢技術による文化財修理のはじまり
  五 新しい修理技術、修理材料の開発
  六 この一世紀の大きな変化
  おわりにかえて

 古文書修理の歴史と理念 湯山賢一
  はじめに
  一 装潢の歴史
  二 古文書の料紙
  三 古文書の保存と管理
  四 文書と古文書
  五 古文書修理の歩み
  むすびにかえて

第二部 表装の文化史
 日本中世の仏画の表装 谷口耕生
  はじめに
  一 仏画の掛軸装
  二 「裱褙」の語と技術の受容
  三 「本尊表紙」の確立
  四 南都仏画の「新表法」
  結語

 〝東山表具〟の成立をめぐる小考 板倉聖哲

 江月宗玩による表具の記録と制作 門脇むつみ
  はじめに―表具文化史における江月宗玩
  一 表具を記録する―『墨蹟之写』、『天王寺屋会記』
  二 記録者としての特徴
  三 表具を誂える―紹智金襴(白地丸龍文)の愛好
  四 表具師との関わり
  むすび

 表装が伝えるもの―後水尾院縁の掛軸を事例として 髙田智仁
  はじめに
  一 後水尾院縁の五幅の掛軸
  二 般舟院伝来の後水尾院御影と大阪青山本御影
  三 後水尾院と表装
  おわりに

 近代日本における中国書画蒐集と表装 竹浪遠
  はじめに
  一 明治における中国書画受容と表装
  二 大正・昭和前期における中国書画流入と関西のコレクターたち
  おわりに

 近代日本画の材料と表装 中野慎之
  はじめに―問題の所在
  一 基底材―絹・紙・礬水
  二 絵画表現―膠・墨・絵具
  三 絵画の制作
  四 表装―表具師とその技術
  おわりに―日本画の材料・形式・保存

第三部 修理の文化史
 平安時代の仏画制作とその修理 増記隆介
  はじめに
  一 平安時代の仏画制作
  二 平安時代の仏画修理
  おわりに

 前近代における書跡・古文書修理の諸相―現状維持の理念をめぐって 横内裕人
  はじめに―国宝・東大寺文書の修理をつうじて
   一 古文書の修理
   二 書跡の修理
   おわりに

 護持院隆光の寺社修理―元禄期の奈良を中心に 古川攝一
   はじめに
   一 綱吉政権期の寺社修理事業
   二 奈良の寺社修理事業
   三 護持院隆光と寺社修理―元禄期の奈良
   四 修理の記憶―唐招提寺所蔵「十六羅漢図」
   おわりに

 近世における障壁画の保存と継承 森道彦
   はじめに
   一 中世障壁画のゆくえ
   二 障壁画の保存・活用と近世社会
   障壁画の履歴の意味―結びにかえて

 近世ヨーロッパ美術と修復―芸術作品の受容史の視点から 平川佳世
   はじめに
   一 西洋絵画の物質的な成り立ちと堅牢性
   二 宗教空間における芸術作品の改変
   三 祈りの対象から美的オブジェへと変容する絵画
   四 芸術愛好家たちの作品改変―前近代における作品鑑賞のあり方

あとがき
執筆者一覧

図書に貢献している教員