兄と弟の3歳仲間の世界へ : 日誌的観察記録から

兄と弟の3歳仲間の世界へ

日誌的観察記録から

編著
教育
心理
麻生武著
高田明(アジア・アフリカ地域研究研究科 / 解説・解題)
Akira Takada (アジア・アフリカ地域研究研究科, 解説・解題)
出版年月
図書体裁
四六判
出版社
ミネルヴァ書房
ISBN
9784623091980
定価(税抜)
2,600
頁数
300
本文言語
日本語

内容紹介

人類史においてきわめて重要な時期である「3歳」。母親の膝の上から離れ(追放され)、仲間関係の世界へと足を踏み入れる葛藤に満ちたこの時期を、子どもたちはいかに生きているのか?――本書では、発達心理学者である父とその妻による観察日誌――じつに1000頁を超える詳細で膨大な記録――から、兄と弟のそれぞれの3歳を鮮やかに描き出し、発達的な意味を浮き彫りにします。誰もがかつて経験した波乱の1年間を追う本書の試みは、子どもたちの内面世界を生態学的に描き出した発達研究であり、同時に二人の子どもと周囲の生きたドラマともいえるものです。また、巻末には人類学者・高田明氏による他領域からみた解説を収録し、視野広く本書を考察。3歳の世界から「ヒト」の発達の面白さに出会える書。

目次

はじめに

1章 船出する3歳(第1期:3歳0ヶ月~3歳2ヶ月)
 1 第1期(兄・U):弟の出現、不安と疎外感
  (1)3歳0ヶ月のU:さまざまな不安
  (2)3歳1ヶ月のU:不安や疎外感の高まり
  (3)3歳2ヶ月のU:平和な小康状態、友だちと遊ぶ
 2 第1期(弟・Y):背伸び、チンピラ化した兄の模倣
  (1)3歳0ヶ月のY:分からなくても背伸びでケンカも
  (2)3歳1ヶ月のY:周りをよく見て同調し背伸び、兄貴の真似でチンピラ
  (3)3歳2ヶ月のY:いろいろな子どもと遊べる、兄とも楽しく

2章 自分の力を感じ始める3歳(第2期:3歳3ヶ月~3歳5ヶ月)
 1 第2期(兄・U):「だって」と自己主張、親には反抗
  (1)3歳3ヶ月のU:弟に対しては優位感、親の指示には従いたくない
  (2)3歳4ヶ月のU:仲間遊び充実せず、親へ攻撃、戦いごっこ、心の理解は進む
  (3)3歳5ヶ月のU:仲間関係は広がり、弟は再びライバルに
 2 第2期(弟・Y):兄の交友圏の周辺で、徐々に力を自覚
  (1)3歳3ヶ月のY:兄の仲間に入れずに、親には規範に従えと命令
  (2)3歳4ヶ月のY:力をつけUの遊び相手に、パワーを自覚し、頑固に自己主張
  (3)3歳5ヶ月のY:兄の遊び仲間の一員になり、交流も広がる

3章 パワーアップし拡がる3歳の世界(第3期:3歳6ヶ月~3歳8ヶ月)
 1 第3期(兄・U):弟の排除と自我主張、悪の喜び
  (1)3歳6ヶ月のU:仲間もできて、弟をあやしたり、排除したり
  (2)3歳7ヶ月のU:我を主張し、泣き訴え多く、過去や未来や死を思う
  (3)3歳8ヶ月のU:自分の権利を防衛しようと叫び、悪を自覚する
 2 第3期(弟・Y):兄とのケンカ、悪くても反省せず
  (1)3歳6ヶ月のY:未来を尋ね、指示聞かず「だって」で自己主張
  (2)3歳7ヶ月のY:仲間とのシール交流で自分の力を感じる
  (3)3歳8ヶ月のY:兄の友とも気分は対等、背伸びで会話

4章 不安と希望、脱皮し始める3歳(第4期:3歳9ヶ月~3歳11ヶ月)
 1 第4期(兄・U):友との交流、弟へのアンビバレンツ
  (1)3歳9ヶ月のU:友ができる、母を独り占めしたく父も弟も邪魔
  (2)3歳10ヶ月のU:弟は目障り、不公平さで父を告発、自分の非は認めず
  (3)3歳11ヶ月のU:鬱屈するエネルギーと攻撃性、母に甘え弟と奪い合う
 2 第4期(弟・Y):兄と対等に遊ぶ、周りが見えてくる
  (1)3歳9ヶ月のY:兄や友を気遣う、親の注意は聞き流し、兄の真似で生きる
  (2)3歳10ヶ月のY:自分の夢を語ったり、母は誰から生まれたか尋ねる
  (3)3歳11ヶ月のY:兄とケンカ可能に、いろいろ考える力、親の指示には反抗
  〈補足〉母親が子どものすぐ側にいること

おわりに

引用文献
解説――3歳児たちのきらめき(高田 明)
あとがき

図書に貢献している教員