たえる・きざす (生態人類学は挑む Session6)

たえる・きざす

生態人類学は挑む Session6

編著
人類学
自然・環境
農学
伊藤詞子編
伊藤詞子(アフリカ地域研究資料センター / 編集, 分担執筆), 四方篝(アフリカ地域研究資料センター / 分担執筆), 伊谷樹一(アフリカ地域研究資料センター / 分担執筆), 風間計博(人間・環境学研究科 / 分担執筆)
Noriko Ito (アフリカ地域研究資料センター, 編集, 分担執筆), Kagari Shikata (アフリカ地域研究資料センター, 分担執筆), Juichi Itani (アフリカ地域研究資料センター, 分担執筆), Kazuhiro Kazama (人間・環境学研究科, 分担執筆)
出版年月
出版社
京都大学学術出版会
ISBN
9784814004409
定価(税抜)
3,200
頁数
331
本文言語
日本語

内容紹介

現代の「人間」の輪郭を浮かび上がらせる試みは、人類が葛藤のなかで培った「耐える」力を探ることから始まる。絶滅の危機にある種と感染症との闘い、焼畑農耕による森の破壊と再生の連関、変動する島環境のなかで移住によって命をつなぐ人々――積み重ねてきた知恵を足場に自らを改変するダイナミズム。

目次

序 [伊藤詞子]

第Ⅰ部 アウター・ワールド再考 

第1章 環境の生成と消滅—人新世とエスノプライマトロジー[足立 薫]
 はじめに
 1 生態と人類の間
 2 霊長類学の「約束」
 3 アフリカから香港へ
 おわりに

第2章 アグロフォレストリーとともに生きる—チャ・コーヒー・カカオ栽培の事例より[四方 篝,藤澤奈都穂,佐々木綾子] 
 はじめに
 1 東南アジア・タイ北部のチャ栽培
 2 中米・パナマ中部のコーヒー栽培
 3 中部アフリカ・カメルーン東南部のカカオ栽培
 4 考察―3 つのアグロフォレストリーに通底する特徴

第3章 タンザニア農村における家畜飼養のこれから—家畜感染症の流行に学ぶ[勝俣昌也,神田靖範,伊谷樹一]
 1 家畜の大量死
 2 牛耕の重要性
 3 2016年のウシの大量死
 4 ひろがるブタ飼養
 5 2017年ブタの大量死
 6 牛耕とホム
 7 アフリカ農村でできること

第Ⅱ部 反転するインナー・ワールドとアウター・ワールド

第4章 つながりを維持し,葛藤を引き受ける—フィジー・キオア島における変化にたえることの歴史と現在[小林 誠]
 はじめに
 1 自然の歴史と文化の歴史
 2 別の島へ
 3 新たなつながりと新たな葛藤
 4 ツバルとフィジーの間で
 5 さらなる変化
 6 変化にたえる
 おわりに

第5章 霊長類の社会変動にみるレジリエンス[竹ノ下祐二]
 はじめに
 1 群れの「危機」と個体の葛藤
 2 「危機」における個体の創造的行動
 3 人工哺育された飼育ゴリラの群れ復帰
 まとめ

第6章 「互恵」と「共感」にもとづく正義の実現—共同体ガバナンスと葛藤解決における普遍的道徳基盤のはたらき[竹川大介]
 1 はじめに 葛藤をのり越える
 2 調査方法と地域概要
 3 葛藤の事例
 4 葛藤解決あるいは正義の実現
 5 人間性のきざし
[補論]普遍的道徳基盤とその生物学的背景―互恵的利他行動と心の理論から生じる「互恵」と「共感」

第Ⅲ部 渾沌を生きる

第7章 国境を越えた集団移住と「環境難民」—歴史経験が生み出すバナバ人の怒りと喪失感[風間計博]
 はじめに
 1 サンゴ島の環境条件と集団移住
 2 バナバ人の歴史経験―島の荒廃と強制移住
 3 移住後の経済生活―環境への順応と困窮化
 4 フィジーにおける集団移住者の法的位置
 5 考察―集団移住モデルの有効性
 おわりに―過酷な「理想郷」の生成

第8章 個の死と類の亡失をめぐる人類学的素描[内堀基光]
 1 個の死と類の存続
 2 死ぬことの人称性
 3 「死者」の誕生
 4 自己の死の生成と不死
 5 個体の向こうと手前
 6 類の存続
 7 類の亡失
 8 保存される種
 9 生まれること

終章 カソゲの森にきざすもの—ヒトがもたらす攪乱と生成[伊藤詞子]
 はじめに
 1 アウター・ワールドとしてのヒト
 2 インナー・ワールドの住人たち
 3 渾沌を生きる
 4 おわりに―クッシー再び

索 引
執筆者紹介

図書に貢献している教員