金工品から読む古代朝鮮と倭 : 新しい地域関係史 (プリミエ・コレクション 79)

金工品から読む古代朝鮮と倭

新しい地域関係史

プリミエ・コレクション 79

単著
歴史
金宇大(白眉センター / 著者)
(白眉センター, 著者)
出版年月
図書体裁
菊上製
出版社
京都大学学術出版会
ISBN
9784814000814
定価(税抜)
4,900
頁数
434
本文言語
日本語

内容紹介

古墳時代の日本にとって朝鮮半島諸国との交流は,国家体制の成熟過程において重要な要素であったが,その交渉関係は具体的には語られてこなかった。本書では,朝鮮半島出土の垂飾付耳飾と装飾付大刀の編年および地域的特性を明確にし,それによって古墳・三国時代の日本列島と朝鮮半島諸国との地域間関係の変遷過程を明らかにする。【京都大学学術出版会Websiteの本書紹介ページより】

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 4~6世紀の朝鮮諸国と倭の関係は謎に包まれています。倭王権の直轄領土としての「任那日本府」の実在は,いまではほぼ否定されていますが,朝鮮半島南部に存在した集団(おそらく金官伽耶)が倭と何らかの利害関係のもとに交流を行っていたのは確実です。しかしその実態はどのようなものだったのか? これまでの日本の考古学では,<倭王権>が一元的に朝鮮との交渉を掌握していたという考え方が強かったのですが,この四半世紀で大量に出土した古墳の埋葬品は,そうした見方を問い直す必要を迫っています。
 中でも,破損や磨滅が少なく,また極めて政治的なアイテム(威信財)として意匠が凝らされた金工品は,技術の伝播,制作者の関係性,付与された意味など,様々な点で,地域の関係史を考える有力な示唆を与えてくれます。本書は特に,美しい垂飾付耳飾と装飾付太刀を対象にして意匠と技術の系譜を追い,倭と朝鮮の関係を問い直します。
 そこから見えるのは,そもそも「日本と朝鮮」という二元的な関係の捉え方そのものの危うさです。その時代の日本列島は初期国家形成期と位置付けられますが,ではそれまで個別に首長制社会を形作っていた地域は,朝鮮との独自の交渉は持たなかったのか。高句麗・百済・新羅の三国と伽耶諸国が分立する朝鮮半島の各勢力と日本列島の関係は,「倭王権」との関係として捉えられるのか,それとも日本列島の分立した勢力との濃淡ある関係として捉えられるのか? カラー口絵に贅沢に示された,金工品ならではの華やかで美しい姿に導かれつつ,古代史の謎に迫ってみませんか?【@京都大学学術出版会Facebookの本書紹介ページより】

目次

序章 古代日朝関係史の課題と金工品研究の可能性
 第1節 金工品研究の目的―美しき最先端技術の結晶
 第2節 半島文化流入の要因をめぐる認識
 第3節 「日朝関係史」という二元的認識の問題点
 第4節 研究の方法と分析対象としての金工品
 第5節 具体的な検討対象
 第6節 本書の構成

第I部 垂飾付耳飾の型式学的検討
第1章 新羅における垂飾付耳飾の系統と変遷
 第1節 新羅の垂飾付耳飾をめぐる研究
 第2節 耳飾各部の分析
 第3節 系統の設定と編年
 第4節 新羅における垂飾付耳飾の変遷と製作体制
 小 結
第2章 昌寧地域出土金工品にみられる特異性の評価
 第1節 金工品の製作地に関する議論
 第2節 昌寧地域出土金工品の検討
 第3節 昌寧における金工品製作の可能性
 小 結
第3章 大加耶における垂飾付耳飾製作
 第1節 大加耶の垂飾付耳飾をめぐる研究
 第2節 耳飾各部の分析
 第3節 系統の設定と編年
 第4節 大加耶における垂飾付耳飾の変遷と技術系譜
 小 結
第4章 日本列島出土垂飾付耳飾の製作主体
 第1節 日本列島出土垂飾付耳飾をめぐる研究
 第2節 個別資料の系譜的検討
 第3節 長鎖式耳飾の製作主体
 第4節 垂飾付耳飾の時期別様相
 小 結
Column 1 考古学にやさしい国

第II部 装飾付大刀の流通と製作技術伝播
第5章 洛東江以東地域における装飾付環頭大刀の変遷
 第1節 「新羅」大刀をめぐる研究
 第2節 大刀各部の分析
 第3節 大刀群の設定
 第4節 新羅における装飾付大刀の変遷
 第5節 大刀製作体制の変化とその意義
 小 結
第6章 百済・加耶における装飾付環頭大刀の製作技法と系譜
 第1節 百済・加耶の装飾付大刀をめぐる研究
 第2節 装飾付環頭大刀の基礎的検討
 第3節 百済・大加耶の大刀製作技術
 第4節 大加耶圏出土装飾付環頭大刀の系譜
 小 結
第7章 朝鮮半島出土円頭・圭頭刀の系譜
 第1節 円頭・圭頭刀をめぐる研究現況と課題
 第2節 円頭・圭頭の定義と用語の設定
 第3節 朝鮮半島出土円頭・圭頭刀の基礎的検討
 第4節 円頭・圭頭刀の技術系譜とその意義
 小 結
第8章 日本列島出土初期装飾付環頭大刀の系譜
 第1節 既往の研究における初期装飾付環頭大刀の評価
 第2節 個別資料の系譜的検討
 第3節 初期装飾付環頭大刀の時期別様相
 小 結
第9章 単龍・単鳳環頭大刀製作の展開
 第1節 単龍・単鳳環頭大刀をめぐる研究
 第2節 環頭部製作技法と外装の相関性
 第3節 半島製品の抽出と列島内製作の開始時期
 第4節 単龍・単鳳環頭大刀製作の展開
 小 結
Column 2 製作方法を推定する

終 章 金工品からみた地域関係史
 第1節 統合編年区分の設定
 第2節 古代朝鮮諸国と倭の相互交渉
 第3節 今後の論点―次なる課題へ向けて

おわりに

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