中国前近代の関津と交通路

中国前近代の関津と交通路

編著
地域研究
歴史
辻正博編
辻正博(人間・環境学研究科 / 編集, 分担執筆), 小方登(人間・環境学研究科 / 分担執筆), 小島泰雄(人間・環境学研究科 / 分担執筆)
Masahiro Tsuji (人間・環境学研究科, 編集, 分担執筆), Noboru Ogata (人間・環境学研究科, 分担執筆), Yasuo Kojima (人間・環境学研究科, 分担執筆)
出版年月
出版社
京都大学学術出版会
ISBN
9784814003877
定価(税抜)
5,800
頁数
364
本文言語
日本語

内容紹介

曹操が、煬帝が、西太后が行き交った交通の要衝——関所と渡し場、峠と回廊の実像を探る。地形や河道の変化、王朝の興亡と遷都、政治制度の変化は、いにしえの中国を旅する人びとに大きな影響を与えてきた。しかしその詳細に注意が払われないまま中国史が論じられている。旅の舞台となった関津・交通路のすがたを、最新の地形分析と精緻な文献解釈、多次にわたる現地調査の成果により多角的に解明。中国前近代の旅の姿を、リアルに浮かび上がらせる。多彩な図版とともに送る、道からみる中国史。

目次

口絵
解題―序に代えて [辻 正博]
凡例

第Ⅰ部 関津―関所と渡し場・橋梁

第1章 衛星画像と地形データ(DEM)を利用した歴史的場所の検討 [小方 登]
 1 歴史地理学研究への衛星画像の活用
 2 数値標高モデル(DEM)の利用
 3 洛陽盆地
 4 潼関
 5 潼関附近の土地区画と泗州城
 6 鎖陽城
 おわりに

第2章 潼関の廃置・移設と武則天の「神都圏」構想 [辻 正博]
 はじめに
 1 潼関の設置と隋の南北関城
 2 武則天の「神都圏」構想と潼関の廃置
 3 近世の潼関
 おわりに

第3章 蕭関の機能的特徴と地理的位置についての一考察―とくに旧関関係史料の分析に重点を置いて [福原 啓郎]
 はじめに
 1 蕭関の沿革
 2 詩跡としての蕭関
 3 蕭関の機能的特徴とその否定的側面
 4 蕭関の地理的位置
 おわりに

第4章 黄河下流平原の「津」―リモートセンシングデータを利用した黄河古河道復元[長谷川 順二]
 はじめに
 1 黄河下流平原の「津」に関する先行研究
 2 戦国~唐代における黄河下流平原の「津」
 3 黄河下流平原における「津」の変遷
  ―今後の「津」研究に向けて

第5章 唐代の蒲津渡と東渭橋をつなぐ交通路 [宇都宮 美生]
 はじめに―発見相次ぐ橋梁遺跡
 1 唐代の黄河の蒲津渡
 2 唐代の渭水の渭橋
 おわりに―交通幹線道と渡津・橋梁

第6章 唐宋時代における僧侶の旅と交通―過所・公験・公憑 [松浦 典弘]
 はじめに
 1 唐以前における僧の移動に対する制約
 2 唐代における僧の移動に対する制約
 3 宋代における僧の移動に対する規制
 4 過所・公験・公憑
 おわりに

第7章 鷄鳴駅の変遷―堡・駅から観光施設へ [千田 豊]
 はじめに
 1 鷄鳴駅の成立と堡としての価値
 2 清代の鷄鳴駅
 おわりに

第8章 蜀道から考える関塞としての秦嶺 [小島 泰雄]
 はじめに
 1 蜀道
 2 桟雲峡雨日記
 3 関中盆地・宝鶏から漢中盆地・褒城への旅程
 4 快速の秦嶺越
 おわりに

第Ⅱ部 交通路―街道と水路

第9章 黄巷・金陡関と潼関―関所の移置と街道の変遷 [辻 正博]
 はじめに
 1 黄巷・黄巷坂
 2 金陡関―潼関の東に置かれた関門
 3 20世紀以降の交通路の変化と潼関―結びに代えて

第10章 河西回廊における遺跡・交通路・オアシスの位置関係―漢代・唐代の敦煌と瓜州を中心に [森谷 一樹]
 はじめに
 1 楡林河~蘆草溝のふたつの扇状地と遺跡の分布
 2 『唐代交通図考』にみえる唐代交通路の検証
 3 蘆草溝オアシスのふたつの囲郭遺跡
 4 懸泉置漢簡にみえる漢代交通路との比較
 おわりに

第11章 太行陘・白陘古道の歴史的意義―古道関連の関塞・集落遺址調査を踏まえて [塩沢 裕仁]
 緒言
 1 太行陘の景観復元
 2 白陘
 3 太行陘および白陘古道関連遺跡
 結語

第12章 武関道から商洛道へ―関中平原~南陽盆地間の交通運輸 [侯 甬堅(小野 響 翻訳、辻 正博 監訳)]
 はじめに
 1 商洛古道開鑿の地質学的前提
 2 商洛古道の交通運輸と道路事情の改善
 3 商洛山間部における近代的自動車道の登場
 4 丹江水運における航行距離の短縮
 5 商洛古道研究における未解決の諸問題
 結論―外部地域による制約と商洛古道の交通運輸

第13章 前近代中国中原の穀倉の発展と交通路―実地踏査による新知見を交えて [宇都宮 美生]
 はじめに
 1 隋唐以前の穀倉の諸相
 2 隋の穀倉とその運営
 3 唐の穀倉とその運営
 おわりに―穀倉と交通

第14章 破岡瀆―建康と三呉の間 [張 学鋒(千田 豊 翻訳、辻 正博 監訳)]
 はじめに
 1 破岡瀆の開鑿とその流路
 2 建康と三呉の間
 3 破岡瀆と六朝時代の海外交通
 おわりに

第15章 前近代中国の運河―洛陽・揚州間の隋・唐・宋運河遺跡をたどって [宇都宮 美生]
 はじめに
 1 通遠渠と通済渠西部分―河南省洛陽と洛口(黄河合流点)の間
 2 黄河―洛口・汴口間
 3 通済渠東部分(汴河)―汴口・泗州間
 4 旧淮河と洪沢湖
 5 淮揚運河―淮安・揚州・瓜洲の区間

おわりに
あとがき [辻 正博]
索引(人名・地名・事項)
執筆者・翻訳者紹介

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