見知らぬものと出会う

レビュー本

見知らぬものと出会う

単著

哲学・思想

文学・芸術

文化・宗教

木村大治 (アジア・アフリカ地域研究研究科 / 著者)
Daiji Kimura (アジア・アフリカ地域研究研究科, 著者)
東京大学出版会 / 2018.09

綴葉 2019年3月号 No.375

「ああ、面白かったら何でもええです」。学生時代、指導教員のそんな一言に人類学研究の迷いを振り払われたという著者は、本学の教授として学際的な研究をつづけている。

宇宙人との出会い方を扱った本書も、なるほど面白い一冊だ。それは、想像できないことを想像することにほかならない。この根本的な矛盾を直視する第Ⅰ部では、宇宙人との邂逅という特殊な出来事を、他者理解一般の問題と接続させることで、似非科学に陥らない説得的な論述を可能にしている。

第Ⅱ部では、さらなる論点に向き合う。すなわち、宇宙人に出会ったとして、彼らとコミュニケーションをとるための共通のコードはありうるのだろうか……?情報理論や言語論、霊長類学や社会学といったさまざまの知見を駆使しながら提示されるのは、コードなき相互行為というありようである。

もっとも、コミュニケーションのためには相手への信頼がどうしても必要となる。第Ⅲ部では、レムの『ソラリス』や筒井康隆のワースト・コンタクト『最悪の接触(ワースト・コンタクト)』など、ファースト・コンタクトSFの分析を通して、そのほのめきが探られる。総じて、文学の想像力を科学の論理と独自の造語で捌いてゆく手並みは鮮やかだ。

かつて著者が「あなたにとって『宇宙人的なもの』は何か」と学生に尋ねた際、「妹」や「友人」との答えも多かったという。本書の面白味は一抹の戦慄と抱き合わせだ。接触、それは遠い未来の話ではない。わたしたちは、すでに彼らに出会っている。
 

レビューアー
春海

綴葉 2019年3月号 No.375, p.11