励起 下 : 仁科芳雄と日本の現代物理学

励起 下

仁科芳雄と日本の現代物理学

Single Author
History
Mathematics & Physics
伊藤憲二(Graduate School of Letters / Author)
Kenji Ito (Graduate School of Letters, Author)
Year-Month
Publisher
みすず書房
ISBN
9784622096191
Price
6,000
Pages
674
Language
Japanese

Outline

〈朝永振一郎が述べているように、仁科の役割は研究そのものというよりは、研究を実施するのに必要な「土台」を日本に作ることだった。(……)本書を読んだ読者は、実際それがどれほどの巨大なもので、どれほどの努力を要するものだったかを具体的に把握したことと思う。現代の科学史・科学論の研究者ならば、この土台を知識生産の「インフラストラクチャー」と呼ぶだろう。〉(終章より)

1930年代、理化学研究所・仁科研究室は規模を増し、宇宙線観測で海外の研究者と競りながら成果を上げ始める。国内の研究者ネットワークを拡充し、海外との情報交換も活性化させていく。下巻ではさらに、湯川秀樹の中間子論の登場、巨大実験の時代の幕開けとサイクロトロンの建設、そして、仁科の名を永久に原爆に結び付けた軍事研究(ニ号研究)を経て、敗戦・占領期の破壊と混乱を見る。そこから日本学術会議や種々の研究インフラを再建して科学界を国際的な研究コミュニティーに復帰させるために、仁科は文字通り粉骨砕身した。
本書は朝永振一郎をして「超人的」と言わしめた仁科の仕事の全容を浮かび上がらせるものである。そのために著者は、自身が発見した新資料も含め、仁科関係文献・書簡やGHQ関連文書などを渉猟し、この時期の歴史的事象を精細に再構築している。20世紀の日本の科学史を語るうえで避けて通れない書になると同時に、国内の科学者に関する“科学史的伝記”の文化を切り拓く意味でも、画期的な著作である。

Table of Contents

IV 研究の開花と巨大科学への道
第16章 学振第一〇小委員会と宇宙線中の新粒子
第17章 原子核物理と小サイクロトロン
第18章 生物・医学研究者として
第19章 中間子理論と素粒子論グループ──湯川・朝永・坂田と仁科
第20章 六〇インチ・サイクロトロンの建設

V 戦争
第21章 総動員下の学術政策
第22章 理研における戦時核エネルギー研究
第23章 原爆投下と被害調査

VI 戦後と復興
第24章 サイクロトロンの破壊とラジオアイソトープの輸入
第25章 学術体制刷新運動と日本学術会議
第26章 理研所長から科研社長へ
第27章 学術外交と死
第28章 遺産

あとがき
仁科芳雄 年譜

図版出典一覧/注記/事項索引/人名索引

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