ボン教 : 弱者を生き抜くチベットの知恵

ボン教

弱者を生き抜くチベットの知恵

編著
哲学・思想
文化・宗教
熊谷誠慈編著 ; 三宅伸一郎 [ほか] 著
熊谷誠慈(人と社会の未来研究院 / 編集, 分担執筆)
Seiji Kumagai (人と社会の未来研究院, 編集, 分担執筆)
出版年月
図書体裁
四六判
出版社
創元社
ISBN
9784422140308
定価(税抜)
2,300
頁数
258
本文言語
日本語

内容紹介

 チベットやヒマラヤ地域には、1200年の間、弱者として生き抜いてきた「ボン教」という土着宗教が存在する。ボン教は、チベットにおける国教の地位を8世紀末に仏教に奪われた。以後、宗教マイノリティとして、弾圧や差別を受けながら現在まで生きながらえてきた。そうした困難な状況にありながら、ボン教徒たちは仏教徒たちに対して攻撃的な態度をとるのではなく、むしろ、仏教の長所を自らの宗教に取り込み、教義の発展、宗教的な成熟を図ってきた。ボン教が、困難な状況下で、平和的で融和的でありながら、強い独自性を維持する姿勢は、近年、多くの外国人を魅了しており、国際的な認知度も高まりつつある。
 1980年代には、ダライラマ14世がボン教徒に対する差別を禁止し、ボン教の信仰の自由を強調した。現在に至るまでチベット亡命政府は、ゲルク派、サキャ派、カギュ派、ニンマ派の4大仏教宗派にボン教を加えた5つを、チベットの伝統的な宗教と認めている。無用な争いを避け、相手に学びつつも、独自性にこだわるという姿勢が、ボン教の哲学の発展と、宗教的権威の回復につながったのではないかと思われる。このボン教の育んできた「弱者として生きぬく術」は、過度の合理性や強者の論理が支配する社会に生きづらさを感じている人々に、自信と希望をもたらすものであり、現代日本人が学ぶべき点は少なくない。
 ボン教は生き方を考える上で学ぶべき点が多いが、また、誰でも、いつでも、どこでも、どの宗教の人でも、手軽にできるすぐれた瞑想法を持っている。ボン教の瞑想法は、日々の生活のストレスを解消するだけでなく、人間関係、仕事、能力、宗教活動など、様々なことに対してプラスの効果を与える。「思考」にとらわれすぎないことで、冷静な判断ができ、内的なプレッシャーがなくなり、失敗しても恥ずかしく思わず、何事にも動じずに対処できるようになる。

図書に貢献している教員