歴史の生成 : 叙述と沈黙のヒストリオグラフィ (地域研究叢書 33)
目次
序文 [小泉順子]
東南アジア史研究の成立と変容 ――背景
新たな視座の模索
叙述と沈黙
本書の構成
第1章 国家・英雄・ジェンダー
―カルティニ像の変遷 [小林寧子]
1 国家英雄の今昔
2 偶像化されたカルティニ
3 独立インドネシアにおけるカルティニ
4 日本のインドネシア史研究におけるカルティニ
5 結びにかえて ――再評価されるカルティニ
第2章 ベトナムのナショナルヒストリーと女性史
―抗米戦争期の歴史叙述 [片山須美子]
1 抗米戦争と歴史叙述
2 ナショナルヒストリーの生成
3 ナショナルヒストリーとジェンダー
4 ベトナム女性史の完成
5 ベトナムのナショナルヒストリーと女性史の残したもの
第3章 植民地史の換骨奪胎
―イブラヒム・ハジ・ヤーコブとマレー史の再構築 [左右田直規]
1 植民地的知とマレー民族意識の形成
2 イブラヒム・ハジ・ヤーコブとその時代
3 イブラヒムのマレー史叙述
4 マレー史の再構築とその帰結
第4章 「近代」をめぐるメタナラティブ
―ビルマにおける「民族医学」の確立をめぐって [土佐桂子]
1 「近代/伝統」議論の再考
2 民族医学の確立
3 「合理」的言説の例 ――『法輪』
4 ガインの書の例 ――『パヨーガの病治療法百科』
5 ナラティブにおける「近代」と「伝統」
6 おわりに
第5章 古典「文学」というナラティブ
―ビルマ語仏教散文『ヤタワッダナウットゥ』が「文学」になるまで [原田正美]
1 近代ビルマを映す書物としてのビルマ語仏教散文
2 『ヤタワッダナウットゥ』の現在
3 近代期の『ヤタワッダナウットゥ』
4 再び成立当時の『ヤタワッダナウットゥ』へ
5 近代化の中で聖と俗のはざまに揺れた仏教散文 ――むすびにかえて
第6章 出版とオランダ領東インドのイスラーム化
―インドネシア近代史叙述とイスラーム・アイデンティティ [菅原由美]
1 インドネシア近代史叙述とイスラーム
2 19世紀後半のイスラーム化潮流
3 東南アジア島嶼部におけるキターブの歴史
4 一般民衆向けキターブの誕生
5 ジャワ宗教指導者が民衆に望んだ方向性 ―イスラーム純化と反オランダ
6 寄宿塾から社会へ ―キターブという媒介者
第7章 自由と不自由の境界
―シャムにおける「奴隷」と「奴隷」制度の廃止 [小泉順子]
1 タイ近代史研究における「奴隷」制度とその廃止
2 チャクリー改革期以前のタート
3 チャクリー改革期のタート
4 タートから雇い人へ
5 国際連盟と奴隷廃止
6 おわりに
第8章 前近代社会の「民族」
―エーヤーワディー流域コンバウン王国のカレン [伊東利勝]
1 民族はいつも歴史のアクターだったか?
2 シッターンにみるカレンの分布
3 地方における課税方法
4 特産物税とカレン
5 視線と自覚
6 「民主化」圧力と民族問題
あとがき
索 引