歴史の生成 : 叙述と沈黙のヒストリオグラフィ (地域研究叢書 33)

歴史の生成

叙述と沈黙のヒストリオグラフィ

地域研究叢書 33

編著
地域研究
小泉順子編
小泉順子(東南アジア地域研究研究所 / 編集, 分担執筆)
Junko Koizumi (東南アジア地域研究研究所, 編集, 分担執筆)
出版年月
図書体裁
菊版
出版社
京都大学学術出版会
ISBN
9784814000579
定価(税抜)
4,400
頁数
340
本文言語
日本語

内容紹介

歴史は、いかに綿密に一次史料に依拠していようとも、書き記す人によって再編成された過去であり、その様相は政治権力の影響を強く受けざるをえない。歴史の語りとその暗黙の前提となる枠組みが形成される過程を読み解き、看過されてきた問題群に光をあて、東南アジア史研究から、歴史学一般、そして知と権力との関係をめぐる議論に問題提起する。

目次

序文 [小泉順子]
 東南アジア史研究の成立と変容 ――背景
 新たな視座の模索
 叙述と沈黙
 本書の構成

第1章 国家・英雄・ジェンダー
     ―カルティニ像の変遷 [小林寧子]
 1 国家英雄の今昔
 2 偶像化されたカルティニ
  3 独立インドネシアにおけるカルティニ
  4 日本のインドネシア史研究におけるカルティニ
 5 結びにかえて ――再評価されるカルティニ

第2章 ベトナムのナショナルヒストリーと女性史
     ―抗米戦争期の歴史叙述 [片山須美子]
 1 抗米戦争と歴史叙述
 2 ナショナルヒストリーの生成
3 ナショナルヒストリーとジェンダー
  4 ベトナム女性史の完成
 5 ベトナムのナショナルヒストリーと女性史の残したもの

第3章 植民地史の換骨奪胎
     ―イブラヒム・ハジ・ヤーコブとマレー史の再構築 [左右田直規]
 1 植民地的知とマレー民族意識の形成
 2 イブラヒム・ハジ・ヤーコブとその時代
 3 イブラヒムのマレー史叙述
 4 マレー史の再構築とその帰結

第4章 「近代」をめぐるメタナラティブ
     ―ビルマにおける「民族医学」の確立をめぐって [土佐桂子]
 1 「近代/伝統」議論の再考
 2 民族医学の確立
 3 「合理」的言説の例 ――『法輪』
 4 ガインの書の例 ――『パヨーガの病治療法百科』
 5 ナラティブにおける「近代」と「伝統」
 6 おわりに

第5章 古典「文学」というナラティブ
 ―ビルマ語仏教散文『ヤタワッダナウットゥ』が「文学」になるまで [原田正美]
 1 近代ビルマを映す書物としてのビルマ語仏教散文
 2 『ヤタワッダナウットゥ』の現在
 3 近代期の『ヤタワッダナウットゥ』
 4 再び成立当時の『ヤタワッダナウットゥ』へ
  5 近代化の中で聖と俗のはざまに揺れた仏教散文 ――むすびにかえて

第6章 出版とオランダ領東インドのイスラーム化
    ―インドネシア近代史叙述とイスラーム・アイデンティティ [菅原由美]
 1 インドネシア近代史叙述とイスラーム
 2 19世紀後半のイスラーム化潮流
 3 東南アジア島嶼部におけるキターブの歴史
 4 一般民衆向けキターブの誕生
 5 ジャワ宗教指導者が民衆に望んだ方向性 ―イスラーム純化と反オランダ
  6 寄宿塾から社会へ ―キターブという媒介者

第7章 自由と不自由の境界
    ―シャムにおける「奴隷」と「奴隷」制度の廃止 [小泉順子]
 1 タイ近代史研究における「奴隷」制度とその廃止
 2 チャクリー改革期以前のタート
  3 チャクリー改革期のタート
  4 タートから雇い人へ
  5 国際連盟と奴隷廃止
 6 おわりに

第8章 前近代社会の「民族」
    ―エーヤーワディー流域コンバウン王国のカレン [伊東利勝]
 1 民族はいつも歴史のアクターだったか?
 2 シッターンにみるカレンの分布
 3 地方における課税方法
 4 特産物税とカレン
  5 視線と自覚
 6 「民主化」圧力と民族問題

あとがき
索  引

図書に貢献している教員