ユーラシア東方の多極共存時代 : 大モンゴル以前

ユーラシア東方の多極共存時代

大モンゴル以前

単著
歴史
古松崇志(人文科学研究所 / 著者)
Takashi FURUMATSU (人文科学研究所, 著者)
出版年月
図書体裁
A5判
出版社
名古屋大学出版会
ISBN
9784815811501
定価(税抜)
13,000
頁数
836
本文言語
日本語

内容紹介

遊牧王朝と中国王朝、なぜ数百年間も併存できたのか ——。モンゴル帝国による統合以前のユーラシア東方では、複数の国家が並び立っていた。契丹(遼)と北宋の盟約による「澶淵体制」、さらには金(女真)の時代の国際関係に焦点を当て、考古資料も活用しつつ、外交・儀礼・信仰から歴史編纂まで東洋史・中国史像を刷新する。

目次

序 章 ユーラシア東方の多極共存時代とは何か
      —— 問題の所在
     1 ユーラシア東方史とは何か
     2 研究史の概観
       —— 多極化時代のユーラシア東方における王朝間関係を中心に
     3 本書のねらいと構成

  第Ⅰ部 10~13世紀のユーラシア東方における王朝間関係

第1章 契丹・北宋間の澶淵体制と国境
     はじめに
     1 澶淵体制とは何か —— 11世紀ユーラシア東方の国際情勢
     2 契丹・宋間の国境の形態
     3 越境する人びと —— 国境管理の原則と越境の実態
     おわりに

第2章 契丹・北宋間における外交文書としての牒
     はじめに
     1 最初の和議 —— 10世紀における契丹・北宋の辺臣間文書
     2 外交文書としての牒文書の起源
     3 外交文書としての牒文書制度の確立とその運用
     4 契丹・北宋両国の朝廷間交渉の手段としての牒と文書管理
     おわりに

第3章 契丹・北宋間の国信使と儀礼
     はじめに
     1 澶淵の盟締結前後の国信使制度の確立とその起源
     2 国信使の旅と接待
     3 国信使の朝見・朝辞儀をめぐって
       —— 国書授受と皇帝・国信使対面の儀礼
     4 契丹朝廷における儀礼の場
     おわりに
     附録 契丹・北宋国信使朝見儀・朝辞儀の儀注原文

第4章 金・北宋間の同盟をめぐって
      —— 外交交渉と儀礼を中心に
     はじめに —— 1117年の遼東漢人の山東漂着
     1 「海上之盟」への道 —— 金・北宋間を結んだ渤海海峡
     2 契丹・金間の講和の模索
     3 金・北宋間の交渉と儀礼
     おわりに

第5章 金国の正旦・聖節の儀礼と外国使節
     はじめに
     1 御寨・上京における儀礼
     2 中都における儀礼
     おわりに
     附録 金国における外国使節入見・朝辞儀と元日の朝賀儀礼

  第Ⅱ部 契丹・金の儀礼と信仰

第6章 契丹の王権儀礼と信仰
      —— 即位儀礼・天地祭祀・喪葬儀礼をめぐって
     はじめに
     1 即位儀礼 —— 柴冊礼
     2 天地の祭り —— 祭山儀
     3 喪葬儀礼と追善供養
     4 契丹人の基層信仰と仏教 —— むすびにかえて

第7章 契丹皇帝の喪葬儀礼
      —— 聖宗文殊奴の喪葬儀礼と慶陵埋葬を中心に
     はじめに
     1 聖宗文殊奴の死と政争
     2 喪葬儀礼(1)—— 永安山と慶州城における殯
     3 喪葬儀礼(2)—— 慶州からの出発
     4 喪葬儀礼(3)—— 慶陵での埋葬とその後の諸儀礼
     おわりに

第8章 慶州白塔建立の謎をさぐる
      —— 契丹皇太后・皇帝の仏教信仰
     はじめに —— 慶州白塔文物の発見
     1 ふたつの建塔碑
     2 陀羅尼経板と慶州白塔建立の目的
     おわりに

第9章 法均と燕京馬鞍山の菩薩戒壇
      —— 契丹における菩薩戒の流行
     はじめに
     1 「法均遺行碑」伝存の経緯
     2 法均の事跡と遼金時代の馬鞍山菩薩戒壇
     3 契丹における菩薩戒の流行
     4 国境を越える参詣者たち
     おわりに —— 道宗皇帝の戒本をめぐって
     附録 「法均遺行碑」録文

第10章 金国の祭天儀礼
      —— 拝天と郊祀をめぐって
     はじめに
     1 女真の祭天 —— 拝天礼
     2 南郊郊祀の導入をめぐって
     おわりに

第11章 金国の祖先祭祀
      —— 御容祭祀と宗廟
     はじめに
     1 御容を用いた祖先祭祀と原廟
     2 宗廟制度(太廟)の導入と展開
     おわりに

  第Ⅲ部 多極共存時代の歴史編纂

第12章 女真開国伝説の形成
      ——『金史』世紀をめぐって
     はじめに ——『金史』世紀をめぐる研究史
     1 世紀の内容
     2 始祖説話と按出虎水完顔部女真の拡大
     3 記憶から文字へ —— 世紀成立への道程
     おわりに

第13章 脩端「辯遼宋金正統」をめぐって
      —— 元代における『遼史』『金史』『宋史』三史編纂の過程
     はじめに
     1 「辯遼宋金正統」訳注と内容
     2 金国滅亡後の東原という場面
     3 クビライ政権における修史事業
       ——『玉堂嘉話』に載せられた「辯遼宋金正統」
     4 『秋澗先生大全集』の出版と三史編纂
     5 元末の正統論争
       ——『国朝文類』に載せられた「辯遼宋金正統」
     おわりに

終 章 10~13世紀のユーラシア東方史
      —— 時代史の概観
     1 契丹(遼)の覇権と澶淵の盟(10~11世紀)
     2 北宋・契丹の自他認識
     3 金国(女真)の覇権と多国体制の存続(12~13世紀初頭)
     4 モンゴルによるユーラシア統合と多極共存時代の痕跡(13~14世紀)
     5 まとめと課題

 注
 あとがき
 参考文献
 図表一覧
 索 引

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